補助事業

日設連では経済産業省の支援と公益財団法人JKAの機械工業振興補助金を得て補助事業を実施しております。

補助事業名「平成19年度 省エネルギー推進のための実態調査等補助事業」

1. 補助事業の概要
(1)事業の目的
(1)エネルギー使用状況調査事業

京都議定書の国際公約を達成するため、平成18年4月「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律案」(改正省エネ法)が施行され、延床面積2000㎡以上の建築物の大規模改修についても省エネ対策が必要と強化された。このとき国会法案成立時の「附帯決議」として、小規模ビル(2000㎡未満)も省エネ対策の必要性が謳われた。また、平成19年4月16日経済産業省・環境省両省の合同審議会で建築物の省エネ基準規制の対象を2000㎡未満の物件にも拡大と提言があった。このことから、1~2年のうちに再度改訂される見込みである。小規模ビルの改修時には、そこで使用されている空調機器や照明機器のエネルギー使用実態を把握したうえで、省エネ対策を立案することが重要であるが、今現在これらの小規模ビルのエネルギー使用実態を表すデータがない状況である。そこで、(一社)日本冷凍空調設備工業連合会(以下、日設連という)では小規模ビルの特定フロアーについて、電力使用量と同時に電力使用実態を時系列的に計測し、個々の小規模ビルに適応した省エネ方策をたてることを、安価にできないかを検討した。その結果、低コストなWebサーバと電力センサーによる電力量計測、および安価な温湿度センサーによる機器の稼働状況把握が可能なIT省エネ診断機器を使用することになり、低コストでデータが収集でき、それらのデータから使用実態を解析し、最適な省エネ方策を提案することが可能となった。それらを活用することにより、小規模ビルを対象とした省エネ化を図り地球温暖化防止に全力で取り組むことが最重要と考える。その成果を活用し、設備工業界に新たな投資を呼び起こし、ビジネスチャンスにつなげることが、中小冷凍空気調和設備工業の振興に大きな意義を持つと考える。

(2)技術セミナー事業

上記(1)の事業のベースとなる改正省エネ法についての技術セミナーを全国で開催する。特に仕様基準であるポイント法、省エネ計画立案のための計測法、データ収集法、省エネ方策の具体例等を中心としたものとし、日設連の会員をはじめ、中小冷凍空調設備工事業界への普及・啓蒙に勤める。

(2)実施内容
(1)エネルギー使用状況調査事業

ア.全国6地区でのエネルギー使用状況調査
イ.特別委員会を設置しデータ報告及び活用法の検討
ウ.データの解析(千葉大学大学院 川瀬貴晴教授に依頼)
エ.同上解析内容の報告書作成

日設連構成団体である宮城、東京、中部、近畿、広島、西日本の6団体から推薦のあった同事業実施希望会社より6事業者がエネルギー使用状況調査事業を実施した(表1参照)。本年度は仙台5ビル、東京5ビル、桑名6ビル、大阪6ビル、岡山6ビル、久留米6ビルの計34ビルが対象となった。また、特別委員会を設置しデータの報告・使用法の検討を行い、データの解析を千葉大学大学院の川瀬貴晴教授に依頼し、解析内容を報告書としてまとめた。

表1. エネルギー使用状況調査事業実施事業者一覧表
構成団体 実施事業者
宮城県冷凍空調設備工業会 空調技工(株)・(株)ファーストテクノ
(社)東京都冷凍空調設備協会 (株)エアコンサービス
中部冷凍空調協会 かき藤空調(株)
近畿冷凍空調工業会 木村工機(株)
中国冷凍空調工業協会 三要電熱工業(株)
西日本冷凍空調工業会 津福冷機工業(株)
(2)技術セミナー事業

ア.セミナー用テキストの作成  イ.全国6都市でのセミナー開催

セミナー用テキスト「省エネ法と省エネ基準・省エネチューニング」(省エネルギー推進のための実態調査等補助事業)について有識者に執筆を依頼した。そのテキストを使用しセミナーを開催。内容については表2参照。また開催場所及び参加人数については表3の通り。

表2. テキスト、及びセミナー内容一覧表
1 改正省エネルギー法
a 省エネ改正法の概要
b 住宅・建築物に係わる省エネルギーの判断基準
c 大規模修繕等におけるCEC/AC等の計算法について
2 最新技術による省エネ計測システム及びデータ分析・評価事例
3 省エネチューニングマニュアル ―運用によるビル設備の省エネ実践―
4 空気調和設備に関する省エネ判断基準と省エネ事例
5 「省エネルギー推進のための実態調査事業」補助事業の概要
表3. 技術セミナー開催状況
  開催地区 開催会場 開催日 参加人数
1 栃木 栃木県建設産業会館 平成19年10月16日 103
2 徳島 徳島流通会館 平成19年10月23日 30
3 沖縄 沖縄県職業能力開発協会 平成19年11月5日 74
4 宮崎 宮崎厚生年金会館 平成19年11月27日 45
5 札幌 札幌市教育文化会館 平成19年12月4日 31
6 静岡 グランシップ 平成19年12月11日 47
合計 330

又、実証事業検証は、物件費(機械設備費)を財団法人JKAの補助金支援を受け実施した。

2. 予想される事業実施効果
(1)エネルギー使用状況調査事業

大規模な建物等の省エネ対策や、実測調査等はこれまでにも行われてきたが、今事業により、小規模ビルの調査を、しかも安価でできたことは、これからの省エネ計画のうえで有効なデータになると思われる。そのデータ等を使い省エネ化と、新たなビジネスチャンスに有効活用されることが期待される。一方、解析を千葉大大学院の川瀬教授に委託したことより、詳細で充実した内容となり、また「小規模建築のエネルギー消費に関する実測研究(その1)」として、8月開催の空気調和衛生学会、並びに9月開催の日本建築学会において、川瀬教授より発表される予定である。また、特別委員に(財)省エネルギーセンターから参加していただいており、同センターでの活用も期待され、その結果これらのデータが業界での設備設計等の省エネ対策に活かされるものと考えることができる。今事業によりエネルギー計測・診断ができ、施主等に対しての省エネ提案が可能となり、これまで工事・メンテナンスを主に事業展開してきた中小企業設備業者が、運転管理等含めコンサルティング業務など新たなビジネス展開が期待される。

(2)技術セミナー事業

テキスト作成・配布した効果は、その活用法等今後設備業者がどのように取り組むかによって期待値が変わってくるが、日設連構成団体、事業実施企業、会員企業、関係団体等に約500部配布したことにより今後の活用に期待したい。また、改正省エネ法に関するセミナーについては、6地区で開催し、合計330人が参加されたことより、関心が喚起することができたと考える。また、最近まで、若干ではあるがテキスト入手希望もあり、業界に浸透しつつあると感じる。

3. 本事業より作成した印刷物

「省エネ法と省エネ基準・省エネチューニング」技術セミナーテキスト 550冊
「平成19年度省エネルギー推進のための実態調査等補助事業」報告書 300冊